東京新聞掲載記事

   症状の緩和から「未病治」によって生活習慣病を防ぐ


 21世紀、科学の発達は目覚ましく、人類に多大な恩恵をもたらしました。医療の分野におきましても、医療技術の進歩は非常に素晴らしく、我が国は世界一の長寿国となりましたが、その反面、高度医療によるさまざまな問題が表面化しており、西洋医学の限界が叫ばれています。鍼灸は、東洋医学を基盤とした医療技術です。東洋医学の最大の特徴は、精神と肉体を一体としてとらえることにあります。病気の原因は、外因性のものばかりではなく、内因性(精神)のものがたくさんあります。たとえば、心の不安、動揺がストレスとなり、ストレスが身体の変調を来し、器質的疾患を起こすことはよく知られています。また、心のバランスの乱れが引き起こすものとして、器質的疾患は見られなくとも、どことはなしに体調不良がおこる不定愁訴というものがあります。不定愁訴でお医者さんにかかった場合、原因が特定できないため、これといった治療がなされずに安定剤や痛み止めをもらって様子を見るという処置がしばしば行われているようです。我々鍼灸師は、こういった患者さんに対しても適切なアプローチをすることができます。心身を健全に保つために、鍼灸は最適な治療法です。さらに、鍼灸は本来「未病治(みびょうち)」といわれ、病気が現れる前に施術をして免疫力を高める予防医学の側面を持っています。現代人の多くがストレスを抱え、生活習慣病にあえいでいますが、鍼灸はその分野においても効果を発揮しています。西洋医学との代替医療や相補・補完医療としての役割と、年々増加し続けて国の財政を圧迫している医療費および要介護の抑制にも大きな役割を果たすものとして期待されています。私どものゴスペル鍼療院は、こういった東洋医学の考え方、卓越した鍼灸技術をもって、35年間川崎市において鍼灸の普及に努めてまいりました。皆様の健康維持・増進の為にもぜひご活用いただければ幸いです。


公益社団法人 神奈川県鍼灸師会

      名誉会長 伊藤昌芳




 



先回、掲載後に多くの質問をいただきました。有難いことで感謝しております。その中で保険は使えますかという方の質問が多く、自由に保険診療ができない鍼灸の現実を申し訳なく思っております。手続きを取れば鍼灸も保険がききますが医師の同意書が必要であり、医師側も商売仇におめおめと同意書を出さないのが現実です。

最近の医学界は揺れています。日本人間ドック学会が突然、血圧の新たな「基準値」を発表しましたが36年間臨床に携わったものとしてよく言ってくれたというのが本音です。鍼灸師の立場から言わせてもらうと血圧をはじめ数値は、今ある体の状態を表している結果にすぎないのであって数値の異常が病ではないということです。ましてや血圧の数値は結果であって病気の原因ではないということです。日本人は素直な民族ですから医者の言うことは何でも正しいとする風潮があります。最近の週刊ポスト8月8日号の見出しに、腰痛で病院に行くと「抗うつ薬」づけにされる!というのがあって興味深く読みました。コメントは賛否両論ですが抗うつ薬を処方しても痛みの症状が改善されるはっきりしたエビデンスはないといわれています。このような非特異的腰痛にこそ鍼灸は有効で、エビデンスもはっきりしていますしアメリカのNIH(日本の厚労省にあたる国立衛生研究所)も腰痛に鍼(ハリ)は大変有効な治療手段であるといっているのです。

治療手段の選択は、最終的には患者本人にゆだねられています。薬による副作用が出ても、よほどのことがない限り医者を責めることができません。こういった状況の中で、治療の選択肢の一つとして、安心・安全な鍼灸治療を是非加えていただきたいです。我々鍼灸師も、個人で、また業界団体を通じて、啓蒙活動を行い、鍼灸普及に努めております。正しい知識と理解でより良い治療ができることを皆様に知っていただければ幸いです。

公益社団法人 神奈川県鍼灸師会

名誉会長 伊藤昌芳